窓際の法務|読書と実務のメモ

企業法務担当者の読書と実務のメモ。

ビジネス法務2026年2月号

とても久しぶりの投稿なので、ひっそりと書きたい・・・。

 

 

今回読んだ「ビジネス法務2026年2月号」では、〖座談会〗「法務パーソンの読書術──AI時代の『選ぶ』『読む』『活かす』」が、とても刺さる特集だった。

AIで要約も検索もできる時代に、結局どこに差が出るのか──その答えは「自分の頭の中の“ひっかかり”を増やす」ことだと整理。

メモ✎

・AI時代でも、問題の所在に気づくには体系知識が要る(ひっかかり=異常検知のセンサー)

・新領域は、まず資格試験で“網羅インプット”してしまうのも手

・良書はリセールで値崩れしにくい(市場が価値を維持している)

・インプットはアウトプットとセット(知識の定着は“使った回数”で決まる)

 

① AI時代でも“体系知識”が必要な理由

AIは答えを出せるが、「何が論点か」「どこが危ないか」を見抜く初動は、こちら側のセンサーに依存する。契約審査でも、条文を読んだ瞬間に「この前提、民法上の原則とズレてないか?」と引っかかるかどうかが勝負。引っかかりは、断片知識より体系化された知識のネットワークで生まれる、という話が腹落ちした。なお、同じ話は、先日参加したAIを活用した法務のセミナーでも指摘されていた。

② 未経験領域は「資格試験インプット」で初速を上げる

新しく担当した業務で専門書を乱読すると、理解の順序がバラけて時間が溶けがち。そこで、試験範囲=論点の地図として使い、まず一周してしまう。これは合理的だと思った。

③ 書籍選定は「値崩れしない=良書」仮説

フリマで値段が落ちない本は、(少なくとも)買い直したい人がいる=価値が残っている。確かに、欲しい本はそもそもフリマで出てこないし、な。もちろん例外はあるが、法務のように“書籍が増え続ける職種”では、選書の簡易スクリーニングとして使えそう。ただ、よくよく考えてみると、ほしいと思った法律関係の書籍って、基本、メルカリとかで売ってないよね。

④ インプットはアウトプットとセットで回す

知識は「読んだ量」ではなく「使った回数」で残る。ここは耳が痛いと同時に、今日ブログを書こうかと思うきっかけとなった。

 

<座談会で紹介されていた法律専門書以外で気になった本(2冊)>

どちらもアマゾンのレビュー評価も高かったので、そのうち読んでみたい。

みんなのフィードバック大全』(三村真宗、2023/3/23)

世界で一番やさしい会議の教科書』(榊巻亮、2015/12/11)

 

余談:

プレゼン資料作成特集で「AI導入により外注セミナー費用が100万円以上削減できた」という紹介があったが、私の驚きは別方向で、法務でセミナー資料作成に100万円超を外注する世界があるのか、と・・・。

利用規約のセミナーの受講メモ(2)

以前も利用規約に関するセミナーを受けたが、今回はまた別の弁護士事務所による解説セミナーを受講した。

ichi-l.hatenablog.com

前回のセミナーはかなり実践的だったが、今回のセミナーは、そもそも利用規約とは何か、改正民法とどう関係しているのか、といった内容から丁寧に解説されており、勉強になった。以下、メモ。

 

  • 約款と利用規約の違い
    約款はBtoB、利用規約はBtoCで主に使われるが意味に違いはない(商習慣による)。
    利用規約は約款より広い意味で使用されることもあるので、利用規約=約款とは限らない。
    約款のうち、民法548条の2第1項柱書に定められたものを「定型約款」という。
  • 利用規約を契約内容とする要件
    利用規約を契約内容とする旨の合意、又は②あらかじめ利用規約を契約内容とする旨の利用者への表示、のいずれか。
    →①の方が丁寧なので、有償サービスの場合は①、無償サービスの場合は②が選択されることが多い。
  • 利用規約の変更
    原則:契約内容の変更には利用者の同意が必要(民法の原則)
    例外:①変更が利用者の一般の利益に適合するとき(利益変更)、②変更が契約目的に反せず合理的であるとき(合理的変更)
    民法543条の3
  • 消費者契約法の不当条項規制に留意
    事業者の損害賠償責任を免除する条項や事業者の面積範囲が不明確な条項(サルベージ条項)は特に注意する。

 

利用規約については、以前紹介した本がとてもうまく整理されているので、もし悩んでいる人がいれば参考にしてほしい。

 

 

 

ESG超入門

少し前から、自社のESGの資料を開示するために色々と関連書籍を読んでみたものの、どれも内容が難しくて、私の頭ではイマイチ理解が進まなかった。そんな中で、今回、偶然本屋で見つけた本書「60分でわかる! ESG 超入門」が一番わかりやすかったので、紹介したい。

 

 

今まで読んだ本は、大企業のレベルの高い取り組みであったり、教科書的な一般論を書いているだけで、実際に何をすれば良いのか、どういう切り口で考えてみれば良いのか、大手ではない中小規模の会社にできることはないのか、といったことにはあまり答えてくれていなかった(読み取れなかっただけかもしれないが)。

本書はそれにストレートに応えてくれている。


事例も豊富で、図表もとても分かりやすい。本書を最初に読んでおけば、ESGデータの収集等がスムーズに進むのではないかと思われる。ESGやSDGsに興味は薄いものの、業務として何らかの対応が必要となった人には強くお勧めしたい1冊だ。

 

以下は本書の抜粋メモ

  • ESGが注目されるのは、世界における「環境」「社会」「ガバナンス」がいい状態ではないからです。
  • ESGはSDGsのような「目標」ではありません。環境、社会、ガバナンスという3つの非財務的な観点が企業の長期的な成長に影響するという考え方です。
  • 企業が経済成長を続けるためにESGを実践する際に、将来的なリスクや機会を見出すためのヒントになるのがSDGsです。
  • (ESG投資において)非財務情報は「持続的な企業の成長力の源泉」と考える
  • 環境、社会、ガバナンスにおける多くの問題を解決しながら、「持続可能な経済成長」の実現に結び付けるのが「ESG経営」
  • ESG課題の解決にいくら貢献したとしても、中長期的にな経済成長に結び付けることができなければ、ESG経営をする目的を果たしたことにはなりません。
  • 大企業は、サプライチェーン上で起こるリスクを自社の問題を捉えるようになっており、原材料の調達先や下請けや下請け業者に対してもESG課題への対応を求め、取引先(サプライヤー)に対して「行動規範」を示す大企業が増えています。(アップルなど)
  • ESGには攻めと守りの両面がある。

 

特に、環境、社会、ガバナンスにおける多くの問題を解決しながら、「持続可能な経済成長」の実現に結び付けるのが「ESG経営」であって、ESG課題の解決にいくら貢献したとしても、中長期的にな経済成長に結び付けることができなければ、ESG経営をする目的を果たしたことにはならない、という指摘には、はっとさせられた。利益を落としてESGを推進するのではなく、それを中長期的な成長に結びつけてこそESG経営であるという視点は大事にしたい。

 

ESG超入門


とはいえ、やはり環境分野への対応は、難しい・・・。

ピラミッド原則の入門

せっかくブログを書いて、かつオープンにしているので、論理的な文章を書きたいと思って購入したのが「入門 考える技術・書く技術」である。

 

入門 考える技術・書く技術

 

この本の帯にもある通り、定番のロングセラー「新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則」の訳者が書いてくれた入門版という位置づけだ。

実は、数年前にマッキンゼー・アンド・カンパニーの方にお会いした際、その理路整然とした考え方や仕事ぶりに色々と感化され、マッキンゼーの問題解決力を標したバーバラ・ミント氏の「新版 考える技術・書く技術」を購入してみたことがある。ただ、私には内容が難しすぎて挫折してしまい、苦い経験となっていた。その後も、内容自体はずっと気になっていたので、今回、その「入門版」に挑戦してみた・・・というのが本書に辿り着いた経緯だ。また、バーバラ・ミント氏の方を原書とすると、「入門版」は原書よりページ数が少なかったことも、取っつきやすかったポイントだった。

 

結論、本書はロジカルシンキング、というよりピラミッド原則を利用した報告書等の作り方を学ぶには良い本だと思われる。

 

まず、本書は「入門版」ということもあって、読み進めることに抵抗は特に無かった。ただ、1回読み終えても、終わったところで「それで何なんだっけ」となってしまい、何度か読むうちに、本書で押さえるべき大事なポイントに気づいた。


1つ目は、本書のテーマである「ピラミッド原則」についての定義である

 

「ピラミッド原則」とは、読み手の立場から、主たるメッセージを絞り、考えを整理し、組み立て、文書に落とし込む一連の流れ


実際にこれは本書内で書かれてあるので、普通の人であれば1回で掴むことができるのだろうけれど、私の場合は、これを掴むまで何度も本書を読む必要があった。特に「読み手の立場」という部分を理解していないと、言葉での表現の注意ポイントを読まされているような気がしてしまうかもしれない。その一方で、この一文を掴んでからは、本書で書かれてある内容の理解が一気に進んだ気がするので、もし同じような方がおられれば参考にして頂きたい。

 

2つ目は、「ピラミッドのイメージ」だ。
最初は上手くできなかったものの、何度か読んだ結果、以下の構成がピラミッドなのだと理解ができた。先にも書いた通り、普通の人は1回で頭に入るのだろうけれど、私の場合は、異様に時間がかかった。

 

ピラミッド原則

入門 考える技術・書く技術」より抜粋した図に一部加工

 

もし、本書を読んでみたものの、内容理解がイマイチだと感じている方の一助になれば幸いだ。

なお、今回のエントリーは、本書で使用禁止とされている「しりてが」接続詞を使わないことを意識して書いてみたものの、はっきり言ってすごく書きづらかった。特に、接続詞「が」は、使いまくっていることに気づかされた。。

 

 

利用規約のセミナーの受講メモ

先日、「利用規約」の見直しのポイントを解説したセミナーを受講した。

個人的なメモをここでまとめておきたい。

  • 禁止事項
    禁止事項の最後にバスケット条項として「その他当社が不適切であると判断する行為」といった記載が設けられていることが多いが、消費者契約法の観点から、「合理的に」の一文を入れておくことが望ましい
    →「その他当社が不適切であると合理的に判断する行為」
  • 免責条項
    消費者契約法の改正で事業者の損害賠償責任を全部免除するような条項は無効となった
    →軽過失の場合に適用される上限額を定めるように変更する
  • 地位の譲渡
    M&Aや事業譲渡に備えて、利用者の地位等の譲渡に個別同意が不要となる条文を入れておくと、後々役に立つ
  • 規約変更
    民法548条の4にある通り、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するような場合は、利用者の個別合意は必要がない
    →前述の禁止事項のバスケット条項に「合理的に」の一文を入れるような変更は個別合意は必要ないと解される
  • 過去の規約規約の管理
    紛争が生じた際、取引時点の利用規約の内容について、事業者側に立証責任が課される可能性がある
    →過去の規約もアーカイブしてしっかり管理しておくことが重要
  • 参考サイト
    https://www.businesslawyers.jp/articles/1370

利用規約については、それなりに分かっていたつもりだったが、上記の内、恥ずかしながら対応ができていなかった部分もあり、早急に変更を行うこととした。
なお、私が普段利用規約やプライバシーポリシーを変更する際に手元に置いて確認しているのは商事法務から出版されている「利用規約・プライバシーポリシーの作成・解釈―国内取引・国際取引を踏まえて」である。他にも色々と比較してみたが、私は一番良いと感じている。