ichi_L’s diary

会計と法務の学習記録として

ピラミッド原則の入門

せっかくブログを書いて、かつオープンにしているので、論理的な文章を書きたいと思って購入したのが「入門 考える技術・書く技術」である。

 

入門 考える技術・書く技術

 

この本の帯にもある通り、定番のロングセラー「新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則」の訳者が書いてくれた入門版という位置づけだ。

実は、数年前にマッキンゼー・アンド・カンパニーの方にお会いした際、その理路整然とした考え方や仕事ぶりに色々と感化され、マッキンゼーの問題解決力を標したバーバラ・ミント氏の「新版 考える技術・書く技術」を購入してみたことがある。ただ、私には内容が難しすぎて挫折してしまい、苦い経験となっていた。その後も、内容自体はずっと気になっていたので、今回、その「入門版」に挑戦してみた・・・というのが本書に辿り着いた経緯だ。また、バーバラ・ミント氏の方を原書とすると、「入門版」は原書よりページ数が少なかったことも、取っつきやすかったポイントだった。

 

結論、本書はロジカルシンキング、というよりピラミッド原則を利用した報告書等の作り方を学ぶには良い本だと思われる。

 

まず、本書は「入門版」ということもあって、読み進めることに抵抗は特に無かった。ただ、1回読み終えても、終わったところで「それで何なんだっけ」となってしまい、何度か読むうちに、本書で押さえるべき大事なポイントに気づいた。


1つ目は、本書のテーマである「ピラミッド原則」についての定義である

 

「ピラミッド原則」とは、読み手の立場から、主たるメッセージを絞り、考えを整理し、組み立て、文書に落とし込む一連の流れ


実際にこれは本書内で書かれてあるので、普通の人であれば1回で掴むことができるのだろうけれど、私の場合は、これを掴むまで何度も本書を読む必要があった。特に「読み手の立場」という部分を理解していないと、言葉での表現の注意ポイントを読まされているような気がしてしまうかもしれない。その一方で、この一文を掴んでからは、本書で書かれてある内容の理解が一気に進んだ気がするので、もし同じような方がおられれば参考にして頂きたい。

 

2つ目は、「ピラミッドのイメージ」だ。
最初は上手くできなかったものの、何度か読んだ結果、以下の構成がピラミッドなのだと理解ができた。先にも書いた通り、普通の人は1回で頭に入るのだろうけれど、私の場合は、異様に時間がかかった。

 

ピラミッド原則

入門 考える技術・書く技術」より抜粋した図に一部加工

 

もし、本書を読んでみたものの、内容理解がイマイチだと感じている方の一助になれば幸いだ。

なお、今回のエントリーは、本書で使用禁止とされている「しりてが」接続詞を使わないことを意識して書いてみたものの、はっきり言ってすごく書きづらかった。特に、接続詞「が」は、使いまくっていることに気づかされた。。

 

 

利用規約のセミナーの受講メモ

先日、「利用規約」の見直しのポイントを解説したセミナーを受講した。

個人的なメモをここでまとめておきたい。

  • 禁止事項
    禁止事項の最後にバスケット条項として「その他当社が不適切であると判断する行為」といった記載が設けられていることが多いが、消費者契約法の観点から、「合理的に」の一文を入れておくことが望ましい
    →「その他当社が不適切であると合理的に判断する行為」
  • 免責条項
    消費者契約法の改正で事業者の損害賠償責任を全部免除するような条項は無効となった
    →軽過失の場合に適用される上限額を定めるように変更する
  • 地位の譲渡
    M&Aや事業譲渡に備えて、利用者の地位等の譲渡に個別同意が不要となる条文を入れておくと、後々役に立つ
  • 規約変更
    民法548条の4にある通り、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するような場合は、利用者の個別合意は必要がない
    →前述の禁止事項のバスケット条項に「合理的に」の一文を入れるような変更は個別合意は必要ないと解される
  • 過去の規約規約の管理
    紛争が生じた際、取引時点の利用規約の内容について、事業者側に立証責任が課される可能性がある
    →過去の規約もアーカイブしてしっかり管理しておくことが重要
  • 参考サイト
    https://www.businesslawyers.jp/articles/1370

利用規約については、それなりに分かっていたつもりだったが、上記の内、恥ずかしながら対応ができていなかった部分もあり、早急に変更を行うこととした。
なお、私が普段利用規約やプライバシーポリシーを変更する際に手元に置いて確認しているのは商事法務から出版されている「利用規約・プライバシーポリシーの作成・解釈―国内取引・国際取引を踏まえて」である。他にも色々と比較してみたが、私は一番良いと感じている。

 

 

 

 

 

業務委託契約のセミナーの受講メモ

先日、「業務委託契約」の基本を解説したセミナーを受講した。

個人的なメモをここでまとめておきたい。

  • 業務委託契約」は法律で定義された用語ではない
    →実務上は内実で「準委任契約」「請負契約」に分類されることが多く、判断する必要がある
  • 委任か準委任か
    委任契約・・・法律行為を委託する契約
    準委任契約・・・事実行為(事務処理)を委託する契約
    →実務上は委任契約はほとんどなく、準委任契約か請負契約がほとんど
  • 委任・準委任契約の場合、受託者は「善管注意義務(善良な管理者の注意を持って業務を遂行する義務)」を負う
    →仮に委任者に損害を与えた場合も善管注意義務を果たしていれば損害賠償しなくて良い
  • 請負契約・・・何らかの「仕事の完成」を目的とする契約
    →受託者は「契約不適合責任」等を負う
    →コンテンツを制作する業務委託契約であれば「成果物」を納品することが仕事に成果に当たり、仕事が完成しなければ報酬を受け取ることはできない
  • 業務委託契約のメリット
    労働法が適用されず最低賃金や解雇などに関する規制を受けない(偽装請負のリスクはある)
  • 業務委託契約のデメリット
    ・社内にノウハウが蓄積しにくい
    ・業務指揮命令権がない
     →具体的に進め方などを支持すると「偽装請負」に当たる可能性がある
  • 業務委託契約書のチェックポイント
    (委託側)
    再委託:あなただからお願いする、という業務なのかどうか。無断で再委託されないよう事前承諾を条件とすることが多い。
    (受託側)
    費用負担:受託者負担としつつも、過大な費用が発生する場合は、委託者と別途協議を行って決定する旨を入れることが多い。
    業務遂行上の義務:業務遂行上で必要な資料がある場合は委託者から提供を求めることができる、と定めておくとスムーズに進む。
  • 契約不適合責任
    引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容(仕様)に適合していない場合に、受託者が委託者に対して負う責任のこと
    →契約不適合責任は任意規程なので原則として契約で修正可能
    (受託側)
    受託者の立場では、契約不適合責任を負うのが「当該契約不適合を知った時から1年間」では期限が不明確かつ長期間になることから「成果物の引き渡し完了時」を起算点とする交渉をする
  • 著作権の帰属
    成果物の著作権の移転を伴う場合、翻訳・翻案権及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利は、それらが移転する旨を明記しないと、受託者に留保されたものと推定される。よって、委託者側としては、契約書には「全ての著作権著作権法27条及び28条に定める権利を含む)」とカッコ書きを明記する必要がある。

私は立場上、受託側の立場がほとんど。大手企業との契約が多いので、修正はほとんど許されないのかと当初は思っていたが、意外と修正案は受け入れられることが多いので、なるべくリスクを低減した契約書のレビューを心掛けたい。
なお、これまで契約不適合責任が全く理解できていなかったのだが、今回のセミナーで少し理解が進んだような気がした。

 

 

サステナビリティと法務

コーポレートガバナンスコードにおいて、サステナビリティに関する要求が増えて、もう3年ほど経過するが、私が働いている規模の会社でも、委員会等の活動を推進する必要が出てきた。法務として何から手を付けようかと手に取ったのが「ゼロからわかるESG・サステナビリティ法務Q&A」という本。

 

 

関西の大手弁護士事務所の書いた本なので、色々な点で安心だろうと思って読んだのだが、QAにはコーポレートガバナンス・コードをそのまま引用している部分もあり、その記述を具体的にどう実務に落とし込めばいいのか、という視点の記載は少ないように思えた。例えば、サステナビリティに関する連動指標KPIも、信託協会のレポートの内容を書いてくれているのだが、なぜこの指標なのか、特にどの指標が重要なのか、といったことを知りたい身としては、やや消化不良気味というのが正直な感想だ。

 

2024年に発行していることに鑑みても、本書を手に取る読者層はコーポレートガバナンス・コードくらい読んでいるかと思ったのだが、ゼロからわかる・・・とタイトルにもある通り、2021年改訂のコーポレートガバナンス・コードを読んでいないような担当者は本書を手に取ってみてもいいかもしれない。(ただ、ゼロからといってもかみ砕いて説明してくれているわけではないので注意)

 

 

 

 

ライセンス契約のセミナーの受講メモ

先日、「ライセンス契約」のセミナーを受講した。

個人的なメモをここでまとめておきたい。

  • ライセンサーは可能な限り商標登録をしておくことが「無難」である。
  • サブライセンス権とは「権利の又貸し」のこと。特許権の専用実施権者であってもサブライセンス権を当然に有せず、必要な場合は明示的に得ておく必要がある。
  • 独占的通常実施権とは、契約上、他の者に実施させたないという特約を付加した権利のこと。通常の「独占ライセンス」とはこちらを指すことが多いが、これはあくまで契約上の合意に過ぎないため、差止請求権や損害賠償請求権を行使できない可能性もある。
  • ライセンスフィーは、売上高比例+ミニマムギャランティを設定する形式もあるが、これはライセンサーの交渉力が強い場合に選択されやすい。
  • ランニングロイヤリティを設定する場合、(実際に行使されなくても)監査権限を契約書に入れることが有効である。

私は業務の関係上、ライセンサーの立場が殆どなので、自社のライセンスをどうやって守る契約書を作成するのかという視点で受講したが色々と勉強になった。次回の契約書作成時に参考としたい。

ライセンスフィーの設定に関しては、「売上高比例+ミニマムギャランティ」の契約しか締結したことがなかったので、自社のビジネスの強みが少し分かったような気がした。